昔の恋人が夢に出た翌朝は最悪だ。
目が開き 夢だったことを悟る前に、とっさに横にいるべき人を確認してしまう。 彼はわたしの横にいるか。
果たして、毎朝 彼はわたしの横で眠っている。 こちらの気配も何のその、今朝も幸せそうに寝息を立てていることに安堵する。
そのことを確認すると、彼、つまり夫に擦り寄り 抱きしめ、顔を後頭部に擦りつけてしまう。 きっと罪悪感。


ここまでほぼ無意識。
ぼんやりした頭でキッチンに立ち、お弁当を準備する。
たまご焼きを焼きながら、無意識の行動を悔いる。
「お願い、もう出てこないで」と今ごろ何をしているのか知れない人に勝手に懇願しながら、何も知らずに眠っている人の昼食を準備する。
それに気づいて、また罪悪感。



ちょっと思う。 夫は昔愛した女性の夢をみるのだろうか?
訊きたいけれど、怖くて訊けない。 軽軽しくそんなことは訊けない。
わたしはただただ、その日の夢の内容を忘れ去る努力をするしかないのだと思う。